南条嘉毅:Roots of tr avel / 一雫の海(Daikanyama)|

体彩七星彩 2019-06-12 02:36157http://www.stockmoe.com/admin

風景を主題とした平面作品を軸に展開する南条嘉毅(1977年、香川県生まれ)は、描く対象の場所に赴き、その場所の特徴を現在の姿のみではなく、歴史の面からも考察し、複層的な画面として描き出す。また、その絵には訪れた現場の土をもちいることで、ポータブルな絵画に場所が持っていた力を付与する試みも行っており、その根底には絵画の場所性に対する作家なりの試行が垣間見える。この試行は、2017年にVOCA展に選出されるなど、平面作家として一定の評価を受け、現在までに数多くの展覧会に選ばれ実績を重ねている。

また、南条の表現活動は近年平面にとどまることなく新たな領域に広がっている。2016年のアートフロントでの個展以降は、土、砂を主要な材料としながら、音と光を加えノスタルジックな空間を通した劇場型のインスタレーション作品として新たな表現方法を確立。翌年の奥能登国際芸術祭にも選出されると、地元の象徴的な材料である珪藻土を用いて、忘れ去られたその土地の歴史を見つめなおすインスタレーション作品を発表、休日には列ができるほどの人気作品として注目を集めた。

その南条が、2019年の今年は満を持して瀬戸内国際芸術祭に参加を決め、生まれ故郷の坂出市で新たな作品を展開する予定になっている。香川県坂出市はかつて塩田が広がり瀬戸内の豊かな自然を背景に塩の生産で栄えた経緯がある。現在はそれらの塩田は住宅地に姿を変えかつての栄華を知るのは一部のお年寄りだけとなってしまった。南条はこの塩を坂出市の歴史をあぶりだすひとつの要素として使用する。塩も大きく見れば、一種の鉱物であり元来、土を用いてきた作家にとって何の違和感も無く創造の種として作品に取り込むことだろう。

今回のアートフロントでの展覧会は、この瀬戸内国際芸術祭に合わせて開催され、南条による故郷の再発見をベースに展開される予定だ。瀬戸内の現場で見る場所性の強いインスタレーション作品と、場所の縛りから開放され、作家の新たな創造による展開を経て生まれる作品の両方を、遠く離れた代官山の地で同時期に見ることができるまたとない機会になる。旬の作家の最新作に期待したい。

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南条嘉毅  熊野の神々が北叟(ほくそ)笑むもの
(中野仁詞/キュレーター)


 南条嘉毅は、あるとき娘から今回の新作展示のプランを閃くことになるお宝を受けとる。娘が彼に渡し、彼の掌の上でキラキラと煌めいていたもの。それは石英(水晶)であった。この石は、仏教においては七宝の一つであるとともに、古代マヤ文明では、様々な願いを叶える石として貴重に扱われた。


 画家、そして美術作家としての南条の問題意識は「場所」である。
 一般的にアトリエやスタジオと呼ばれ作家が作品を創作し彼らの思想が造形物として具現する場所、そしてその作品が展示される美術館、ギャラリーなどの展示施設の場所性。最近火事で大部分が焼失したパリにある世界遺産のノートルダム寺院(2019年4月)。この巨大な宗教的建造物の壁に描かれている聖人画に囲まれた空間に見ることができるように、この「場所」は長い月日に渡り多くの人々が祈りを捧げた場であるとともに、その作品群はわれわれの祈りの具体的、視覚的対象となっていることにも、南条が意識する場所性を確認することができよう。

 2017年に能登半島の先端に位置する石川県珠洲市で開催された奥能登国際芸術祭。この招待作家として参加した彼は、開催地が植物プランクトンの化石である珪藻土の国内最大の産地という情報をもとにこの素材を使用した。展示では、閉鎖に至った映画館というかつてこの空間で様々なドラマと対峙した地元の観客の息遣いが残る場所を活用しドラマティックなインスタレーションを発表した。そして、南条は、今回の展示でも娘が見つけ持ち帰ってきた石英に、和歌山県の熊野というスポットに場所性を求めたのである。


 本展は、二つの構成による。

 一つは、石英という石が作家の手に入ったことにより、古く10世紀に遡り宇多天皇に始まる熊野詣など、この地の歴史を再発見、再認識により制作された作品の展示だ。石英はまた、時計の一部としても使われている材料であり時の象徴とも言える。Room-Aでは、これらの要素を展示空間にプロジェクションやLEDライトを駆使し、光と音を巧緻に関係させ成立させている。

 Room-Bでは、本年(2019年)参加する瀬戸内国際芸術祭で発表する作品に、彼の考える場所性を加味した作品である。瀬戸内海に面する彼の生まれ故郷、香川県坂出市。かつて塩の生産が盛んであったこの地の歴史を捉え、瓶の中で氷柱状に吊るされた塩の結晶がゆっくりと溶け出して行くことで、南条は坂出に纏わる、近く遠い時間と場所の記憶を呼び戻すことを試みる。


 筆者が大学に通っていた頃、和歌山県新宮市出身の友人がいた。彼は、夏休みの時期に毎年のように彼の実家での滞在を誘ってくれ、われわれは新宮から熊野川を遡った本宮町にある彼の本家に滞在した。江戸時代の家屋の本家での滞在は、七輪で魚を焼き、五右衛門風呂に入り、寝る時は蚊帳を吊る、という普段にはない体験ができた。

 そして、滞在する度に本宮大社、速玉大社、那智大社に鎮座する熊野の神々に詣で、熊野古道を歩き、那智の滝の細かい水しぶきを被った。鬱蒼と茂る木々からなる森林。枝の隙間から溢れる光。熊野川の煌々と流れる水。そこには、熊野という場所ならではの、静謐で密やかな自然の有様を体感できる。そして、この山奥の地でわれわれは、神々に深い祈りを捧げる。

 南条嘉毅は、彼が現在住まう熊野という地の歴史的、宗教的、地理的、そして彼自身の経験的な諸要素をもとに、彼の鋭い視点と感性で捉え制作した作品を展示する。
 熊野の神々は、遠方からこの展示をご覧になり、作家と作品のこれからの展開について、それぞれ異なった穏やかな面持ちで北叟笑んでいるようだ。





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